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【初心者向け】無窓居室の4種類と対応策を徹底解説!採光・換気・排煙・避難の全て

いろり
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皆さんはこのような経験はないでしょうか?
先輩、上司の方から「無窓居室の検討しておいて!」「無窓解除できる?」等と言われたことはありますでしょうか。

無窓居室は建築計画において避けて通れない重要な概念です。単純に「窓がない部屋」という意味ではなく、建築基準法上の厳格な定義があり、対応を間違えると設計が成り立たなくなる可能性もあります。

無窓居室とは?

無窓居室の定義 無窓居室とは、「建築基準法における一定の要件を満たす窓」が無い居室のことです。つまり、物理的に窓があっても、法律上の要件を満たしていなければ「無窓居室」として扱われます。

建築基準法では「無窓居室」という用語は直接使われず、条文の中では「条件を満たす開口部を有しない居室」という表現で出てきます。

無窓居室の4つの種類

無窓居室は、以下の4つの観点から分類されます:

  • 採光無窓居室
  • 換気無窓居室
  • 排煙無窓居室
  • 避難無窓居室

それぞれ異なる条文で規定され、対応方法も異なります。

【第1種】採光無窓居室の詳細

関連条文と基準

採光無窓居室は、以下の3つの条文のいずれかに該当する場合です。

建築基準法第28条第1項(住宅等の採光)

住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物の居室(政令で定めるものを除く。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一以上としなければならない。

建築基準法第35条(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)

別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室若しくは下屋を有する建築物又は延べ面積が千平方メートルを超える建築物については、廊下、避難階段その他の避難施設、消火設備、排煙設備、非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて設けなければならない。

建築基準法第35条の3(無窓の居室等の主要構造部)

政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、その居室を区画する主要構造部を耐火構造とし、又は不燃材料で造らなければならない。ただし、別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途以外の用途に供する建築物で政令で定めるもの又は政令で定める技術上の基準に適合するものについては、この限りでない。

採光の計算方法

どの規定においても「採光上有効な開口部の面積(=有効採光面積)」を求め、この計算で求めた有効採光面積が「居室の面積に各規定で定められた割合をかけた数値(=必要採光面積)」以上であることを確認します。

計算式

必要採光面積(㎡)≦ 有効採光面積(㎡)
必要採光面積 = 居室の面積 × 各規定で定められた割合

必要採光面積の割合

  • 住宅:1/7以上(約14.3%)
  • 学校、病院等:1/5以上(20%)
  • 特殊建築物(法35条):1/20以上(5%)

採光無窓居室への対応

法第28条の場合

住宅系(一戸建て住宅、共同住宅)は法第28条が厳しいです。なぜなら、そもそも採光無窓にしてはいけないから。基本的に無窓居室は認められません。

法第35条の3の場合

採光無窓居室は、その居室とその他の部分を「耐火構造」または「不燃材料」の壁・床で区画しなければなりません。

対応方法

  1. 耐火構造による区画
  2. 不燃材料による区画
  3. 令和5年4月1日施行の緩和規定(告示第249号)の活用

【第2種】換気無窓居室の詳細

関連条文

建築基準法第28条第2項(換気)

居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。

換気無窓居室への対応

換気無窓の基準は建築基準法第28条第2項で求められる「換気に有効な開口部」を有していない場合です。

対応方法

  1. 自然換気設備(政令第20条の2)
  2. 機械換気設備(政令第20条の3)

機械換気設備の基準

  • 必要換気量:居室の容積×0.5回/時以上
  • 24時間連続運転が可能なもの

【第3種】排煙無窓居室の詳細

関連条文

**建築基準法施行令第126条の2(排煙設備)**に基づき、排煙上有効な開口部を有しない居室。

対応方法

自然排煙

  • 排煙上有効な開口部を天井面から80cm以内に設ける
  • 開口面積:居室床面積の1/50以上

機械排煙

  • 機械排煙設備の設置
  • 排煙量の計算と設備容量の確保

【第4種】避難無窓居室の詳細

関連条文

建築基準法第35条および政令第116条の2に基づく避難上有効な開口部を有しない居室。

対応方法

  • 避難階段までの歩行距離の短縮
  • 2方向避難経路の確保
  • 内装制限の強化

実務における注意点

よくある設計ミス

検査員として実際に業務を行っている中で、よく見られる間違いをお伝えします。

頻出エラー

  1. 採光計算の誤り:隣地境界線からの距離を考慮しない採光補正係数の計算ミス
  2. 用途による基準の混同:住宅と特殊建築物の採光基準を間違える
  3. 複数の無窓居室の見落とし:採光はOKでも換気や排煙で無窓になるケース

設計段階での確認ポイント

チェックリスト □ 居室の用途と面積の確認 □ 開口部の有効面積計算 □ 隣地境界線等からの距離測定 □ 各基準値との比較検討 □ 無窓の場合の対応策検討

2023年改正による緩和措置

令和5年4月1日施行の法改正により無窓居室による区画(法35条の3)の緩和が追加されました。

緩和の内容(告示第249号)

適用条件

  1. 採光無窓居室の面積が200㎡以下
  2. 自動火災報知設備の設置
  3. 一定の構造基準への適合
  4. スプリンクラー設備の設置(条件によって)

実例:共同住宅での対応

ケーススタディ

  • 建物:3階建て共同住宅
  • 問題:1階店舗部分の採光不足
  • 対応:法第35条の3の緩和規定を活用し、自動火災報知設備とスプリンクラー設備を設置して不燃材料区画を回避

まとめ

無窓居室は建築設計において重要な検討項目です。4つの種類(採光・換気・排煙・避難)それぞれに異なる基準と対応方法があり、建築物の用途や規模によって適用される規定も変わります。

特に重要なポイントは以下の通りです:

  1. 採光無窓居室は最も制約が厳しく、住宅では原則認められない
  2. 換気無窓居室は機械換気設備で対応可能
  3. 令和5年改正により採光無窓居室の緩和措置が追加された
  4. 設計段階での早期検討が不可欠

建築士を目指す皆さんは、各条文の趣旨を理解し、実務で適切に判断できるよう準備を進めてください。無窓居室の対応は、建築物の安全性確保と利用者の快適性の両立を図る重要な設計技術です。

次回は建築基準法第12条「定期報告」について、2025年の最新情報も含めて詳しく解説予定です。建築物の適正な維持管理について理解を深めていきましょう。


この記事が皆さんの建築基準法理解に役立てば幸いです。無窓居室について質問やご意見がございましたら、コメント欄でお聞かせください。

根拠法文・参考資料

建築基準法(昭和25年法律第201号)

  • 第28条第1項(住宅等の採光)
  • 第28条第2項(換気)
  • 第35条(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
  • 第35条の3(無窓の居室等の主要構造部)

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)

  • 第19条(居室の採光及び換気)
  • 第20条の2(換気設備についての技術的基準)
  • 第20条の3(機械換気設備についての技術的基準)
  • 第111条(窓その他の開口部を有しない居室)
  • 第116条の2(避難上の安全の検証)
  • 第126条の2(排煙設備)

告示

  • 令和2年国土交通省告示第249号(採光無窓居室の区画緩和)

参考資料:

  • 国土交通省「建築基準法の一部を改正する法律等の施行について」(令和5年4月1日施行)
  • 日本建築センター「建築基準法質疑応答集」
  • 建築指導課長会議資料

記事作成日:2025年9月 法令等は2025年9月現在施行中の法律に基づく

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建築士/二児のパパ
現役の建築士です。
これから建築士の目線で物事を見ていき、解説、紹介等の発信をし、建築が少しでも面白いと思っていただければと思います。

また、二児のパパもしているので、その視点での発信もできたら良いなと思います!

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